七戸町立鷹山宇一記念美術館

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鷹山宇一について

作品紹介

代表作品を鑑賞できます。解説とあわせてお楽しみください。

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鷹山宇一の油彩 1〜花と蝶を描く画家〜

「早春賦」 1990年、キャンバス・油彩、60.8×50.5cm
1990年春季二科展出品作

雪国に暮らす者にとって春は大変に待ち遠しい。ようやく3月に入ると日差しも柔らかに、暖かさを増していく中で氷も徐々に解けて、いよいよ春がやって来たか、と頬を弛ませると意地悪くもまた雪の日が続いたりする。手が届きそうで届かない「春」をじれったく思う。

『早春賦』は、花瓶に活けられた花々を前景に、背景には様々な風景を配するという、鷹山宇一の代名詞的な構図を見ることができる。画面は一見して至極シンプルだが、必要最小限のモチーフと空間は絶妙に均衡を保ち、かえって見る者の想像力をかきたて奥が深い。70余年の長きにわたり絵の道一筋に生きた画家の力量を感じさせる作品である。

花たちは彩りも鮮やかに、その彼方に青みがかって見えるのは残雪の山であろうか、現実にはありえない非日常なこの組み合わせを深い闇が静かに結びつけ、私たちは思い思いに物語を創り出す。

今、七戸の地から八甲田の山々を望む時、この作品がまさに春の訪れを待ちわびる雪国の人々の心を描いているように思えてならない。それは、鷹山自身の心でもあり、ふるさとの思い出と共に画家の胸に刻み込まれた原風景なのかもしれない。

鷹山の生まれ育った地に建つこの美術館で、『早春賦』は静かに皆さんとの出会いを待っている。

(学芸員 大池亜希子)

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